Babauoù in Private Notes

アマチュア音楽ユニット、Babauoùに所属するKunio (Josh) Yoshikawaの雑記帳です。 我々のFacebook "Babauoù Book”にもどうぞお越しください。

 All Together Now 「LOVE」ドキュメンタリー


ラス・ベガスで観てきたシルク・ドゥ・ソレイユビートルズのコラボレーション「LOVE」のメイキング・ドキュメンタリーです。


オール・トゥゲザー・ナウ [DVD]

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私が観てきた時の感想はこちら


特典映像まで含めると2時間たっぷりの内容。
見応えありました。


クリエイティブなコラボレーションの理想型を見た、という印象です。
シルク・ドゥ・ソレイユのスタッフはもちろん、参加するパフォーマービートルズ、亡くなったビートルズ・メンバーの家族、ホテルのショー担当者、そして音楽の再構築を引き受けたマーティン親子。全てのコラボレーターが主張し、出てきた全てのアイディアは検証される。そして、ここからが肝心なのですが、ぶつかりあった主張の答えは、妥協し歩み寄って見つけるのではなく、それぞれの主張をさらに高めたレベルのところに一致点を探して解決する。これが感じられたのが嬉しかった。何故あそこまでの完成度が達成できたのか、自分は何故ポールの歌声が聞こえた瞬間に涙を止められなかったのか、その秘密がわかったと感じました。


そして、これはひとつのバンドの理想型とも重なります。
全員がアイディアを出し、平均値をみつけるために妥協するのではなく、ぶつけ合わせてさらに上の答えを探す。
大事なのは、バンドのメンバー全員がそうしようと思っていることです。


このドキュメンタリーにおけるポールやリンゴの発言はそれを象徴していました。そこにあのジョンとあのジョージが加わっていたビートルズはまさにその理想を貫いたバンドだったと思います。
彼らが音楽を作っていた姿勢と、今回の「LOVE」が作り上げられたプロセスが重なりました。


「古いものを大事にする人は、僕等の古いアルバムを聴いてくれればいい。
 僕等はビートルズの新しい音楽を作ったんだ。」


ビートルズ素材の改変にファンからの批判も多い「LOVE」のアルバムについての他ならぬポール・マッカートニーの言葉です。


私が「LOVE」を観に行くきっかけを作ってくれた友人も、こちらにこのDVDの感想を書いています。



(追記1)
字幕の誤訳が少し気になりました。"loud"を"low"と取り違えていたり。発音が聞きづらいとしても文脈がおかしいのだからすぐに気付いても良いのに……。字幕翻訳も余裕が無くてやっつけになっているのかな。あれほど完璧を期しているプロジェクトなのだから、ここで妥協しないでほしいものです。


(追記2)
映画「アクロス・ザ・ユニバース」のジュリー・テイモア監督にはこれがどうも欠けていたように思います。アイディアを主張するのは良いのですが、検証が十分でなかった感じ。浅く感じたアイディア、ツメの甘いプロダクションがところどころ気になりました。ビートルズの魅力を次のジェネレーションに届ける企画は基本的に大歓迎で、「アクロス・ザ・ユニバース」もその役割を果たしていると思いますが、それに挑戦する人たちにはビートルズとのコラボレーションに恥じないこだわりの深さと、ひとりよがりにならない検証を是非大切にしてほしいと思います。