Babauoù in Private Notes

アマチュア音楽ユニット、Babauoùに所属するKunio (Josh) Yoshikawaの雑記帳です。 我々のFacebook "Babauoù Book”にもどうぞお越しください。

2023年ロンドン旅行記【Stage, Event & Exhibition】その3 - "Robin Hood", "SIX"

7月13日(木)

S3 Robin Hood : The Legend, Re-written. Regent’s Park Open Air Theatre

「ロビン・フッド」(2回目:昼公演)

 今度こそ正真正銘14:45のマチネ。何度見ても面白い。昨晩はちょっと雨も降ったりして凍えるほど寒かったのですが、今日の昼公演はすごく暑くて休憩中にアイスクリームを買いました。野外公演は天候に左右されるのが難しいところだが、それも含めて振れ幅の広いダイナミックな経験だった。売店スクリプトを売っていたので購入。この本は研究してみたい。

 問題の森の闇の演出は、スモークの量を次第に増やしていくという手法で解決していました。物語が進むにつれて森に立ちこめる霧が深くなっていき、ロビン・フッドの存在がより謎に包まれていくという流れ。これはこれで別の魅力を醸し出して見事に成立していたました。徹底的に工夫を凝らした素晴らしいプロダクションです。昨日よりも舞台に近い席を選んだので細かい仕掛けも観察できたし、もう一度観劇した甲斐がありました。

 

S4 SIX Vaudeville Theatre

「シックス」ヴォードヴィル劇場

 2022年のトニー賞で楽曲賞を獲った作品。これもまた「歴史ネタ」ですが、ロビン・フッド以上にユニークな仕掛けになっていました。

 英国国教会を作ったヘンリー8世の6人の元妻(ex-wife)は、それぞれ「離婚(divorced)、斬首(beheaded)、病死(died)、離婚(divorced)、斬首(beheaded)、生存(survived※ヘンリー8世の逝去により死別)」という運命をたどったのですが、その6人がステージで一堂に会してボーカルグループを組み、「いちばん酷い目にあった」人がセンターを取るという決まりで各々の歌を競う、というミュージカル。設定からしてぶっ飛んでいます。

 2016年、ケンブリッジ大学の学生だったトビー・マーロウとルーシー・モスはその頃学んだヘンリー8世のネタからこのアイディアを思いつき、ビヨンセのストーリー仕立てのステージにインスパイアされてこの作品を仕上げ、エディンバラの芸術祭で学生演劇として発表しました。これが大評判を取り、ウエストエンドを経てブロードウェイの上演にまで繋がったのです。

 構成は全員の歌と一人ずつの歌を交互に繰り返していくライブ仕立てで進み、6人目の妻キャサリン・パー(最も賢い女性だったと言われる)が、もうヘンリーじゃなくて、自分たち自身に関心を持とうと他の5人に呼びかけ、最後は6人リードの「Six」というナンバーを共に歌い上げてクライマックス、という流れ。とてもシンプルですが、6人それぞれが抱えた運命を歌で紡いでいくことで、「女性」や「女性性」についての意識が深まっていく内容になっています。6人の中にノンバイナリーのキャストを入れてクィアへの理解まで踏み込んで行くのがこのカンパニーの特徴で、今回も二人目の妻アン・ブーリン(「1000日のアン」で知られる)はノンバイナリーのキャストが演じていました。

 徹底的にファンタジックな仕掛けでファッショナブルできらびやかでありつつ、歴史にもしっかり向き合い、かつ女性が自分の意思で生きていくことの素晴らしさが歌い上げられて終わるステージ。楽曲の出来もかなり良くて迫力があり、全員リードが取れるスーパースターバンドのライブみたいな感じなので、リピーターが続出してる気配濃厚でした。

 超人気の舞台で、ロンドン入りした時点で、一ヶ月後までチケットは完売だったのですが、当日朝にキャンセル分などを比較的安価で早い者勝ち再販売する「Rush Ticket」にチャレンジして、最前列ど真ん中という超良席を安く確保できました。

 来年2025年のお正月に日本語字幕付の日本公演が決まったようです。この記事を読んで気になった方は是非観に行ってみてください。私ももう一度行きたいと思います。

(※ E=Event & Exhibition、S=Stage Performance)