Babauoù in Private Notes

アマチュア音楽ユニット、Babauoùに所属するKunio (Josh) Yoshikawaの雑記帳です。 我々のFacebook "Babauoù Book”にもどうぞお越しください。

Sting "Songs from the Labyrinth" Live


スティングが、リュート奏者のエディン・カラマーゾフと17世紀の作曲家ジョン・ダウランドの曲を演奏するコンサートに行ってきました。


ラビリンス

ラビリンス


同名のこのアルバムがとても良くて興味を持っていたのですが、チケットを買いそびれていたところ、友人のFさんのおかげで、直前になって奇跡的に2枚入手できて、中世・ルネッサンス音楽の研究者である妻(Babaouoの鍵盤担当でもあります)と、出かけてきました。


期待通り、とっても素晴らしいコンサートでした。
素敵なクリスマス・サプライズをありがとう(^^)>Fさん。


内容はもちろんアルバムからの曲がほとんどですが、CDではスティングが一人多重唱をやっているので、二人以外に男女4人ずつのクワイアが参加していました。
この人たちがまずとても良かった。


スティングに「スティレ・アンティーコ」と紹介されていましたが、古楽を中心に活動している合唱グループらしく、ピッチビブラートをかけないとても素直な発声で、心地よいハーモニーの響きを堪能しました。


コンサートの第一部はコーラス8人だけのステージでしたが、指揮者がいないのに、タイミングも音の強弱のコントロールもパーフェクトで驚きました。
あそこまで追い込むには相当ハードな訓練をしていると思いますが、そんな気負いはみじんも見せず、黒幕を背景に黒い衣裳の8人があくまでも静かに奏でるクリスマス・キャロルは、本当に美しかった。


第二部は、お待ちかねのスティングとエディンが登場し、必要に応じてコーラスが加わる、というスタイルでプログラムは進んで行きました。
エディンのリュートがこれまた素晴らしく、聞き惚れました。
太く存在感のある低音の響きから、繊細できらびやかな高音まで、自由自在に豊かな音の空間を創り出していました。
「名手」という言葉はこういう人のためにあるのだな、と痛感です。


スティングはどうも喉の調子に不安があったようでしたが、次第に調子をあげて、いつもの響きを取り戻していました。
スティングの声はやや金属的なところが特徴で、そこが彼のセールスポイントでもあると思っていましたが、リュートとのかけあいではとてもアコースティックに響き合って、暖かみと品のある歌声でした。


一通りのレパートリーを演奏して、一旦ステージを去り、アンコールの拍手で戻ってきた二人(+8人)。
……ここからが圧巻でした。


ダウランドの音楽が、その後のイギリスの世俗音楽に脈々と受け継がれている、と語ったスティング。
そして、たぶんダウンランド以降の作曲家の曲だと思うのですが、それを2曲(だったかな)演奏。
そして、突然ビートルズの「In My Life」。
とても丁寧なアレンジで、ダウランドからの流れに自然につながってきました。
コーラスも美しかったし、ピアノソロ部分のリュートかけあいもとても楽しかった。
そして、さらに自分の音楽へと導き、「Fields of Gold」「Message in a Bottle」。
アメリカとは異なる英国ロック独自の源流の存在感を、とても自然に、しかも楽しく豊かに聴かせてくれました。


さらに鳴り止まぬスタンディング・オベーションに応えて、再登場したスティングは、今度はいきなりリュートでブルース!
さらにエディンも加わって、たぶん飛行機の中で練習してきたと思しき「さくら」(笑)。
このあたりはご愛敬でしたが、リュートの音色に、明らかに日本の琴につながる響きを感じました。


最後はコーラスも再登場してクリスマス・キャロルダウランド作品でフィニッシュ。
このユニット(バンドと呼んでもいいかな)の呼吸の合ったアンサンブルと、意外なほどの許容力の幅に感心しきりでした。


思ったこと。


音楽は、広くて、自由で、そして、つながっている。