Babauoù in Private Notes

アマチュア音楽ユニット、Babauoùに所属するKunio (Josh) Yoshikawaの雑記帳です。 我々のFacebook "Babauoù Book”にもどうぞお越しください。

世界一のタップ「ノイズ&ファンク」


映画「タップ」の主役としても知られるアメリカの有名なタップ・ダンサー、グレゴリー・ハインズが「自分の時代は終わった」と語るきっかけとなった天才タップ・ダンサー、セイヴィオン・グローバートニー賞受賞ミュージカル「ノイズ&ファンク」を観てきました。


黒人がアフリカから携えてきた「ビート」の肉体的表現として「タップ」を捉え、タップを踏みながら、奴隷船で運ばれてきた時代から、現代までのアフリカン・アメリカンの歴史をたどっていく、というステージです。


目をこらしてみても一つのアクションにつき三つずつ音が聞こえるセイヴィオンの天才ぶりも堪能しましたが、シンプルさを極めたステージそのものもとても印象的でした。


男女二人の「声」、四人のタップ・ダンサーのアンサンブル、そして二人のドラマーが叩くのは鍋とポリバケツ。ほとんどがこの出演者だけで構成されています。ステージは黒幕バックで、日常にある最低限のものしか出てきません。たぶんもっともお金をかけた装置は「スライド」です。その安上がりなセッティングで、肉体を駆使して最大限のインパクトを与える。アマチュアが機材や資金の不足を嘆くのは言い訳に過ぎないと思い知らされるとても刺激的なステージでした。


黒人の歴史を描く、というとどうしても暗い描写を想像しがちですが、このステージは全く逆。制限された環境の中で、自分たちがどんな風に喜びや情熱を表現してきたのか、を表現しています。その全てが情熱的でエネルギッシュ。そのパワーには圧倒されっぱなしでした。


自分のアイデンティティにクールに向き合い、卑屈になることなく自分たちの表現としてそのスタイルを昇華させていく姿に感動しながら、あらためて感じたのが、日本人である私たちの音楽的なアイデンティティのこと。


もちろん、サウンドを意識して日本的なものにしよう、などと考える必要はないと思いますが、ここに生まれ、暮らしてきたことを否定することなく、西洋音楽を下敷きにしている自分たちの音楽に、自分たちの文化を素直にポジティヴに織り込んで行けたらと思います。


(Josh)


Bring In 'Da Noise, Bring In 'Da Funk (1996 Original Broadway Cast)

Bring In 'Da Noise, Bring In 'Da Funk (1996 Original Broadway Cast)