Babauoù in Private Notes

アマチュア音楽ユニット、Babauoùに所属するKunio (Josh) Yoshikawaの雑記帳です。 我々のFacebook "Babauoù Book”にもどうぞお越しください。

硫黄島からの手紙

josh9092007-01-08



ようやく観ました。とても見ごたえがありました。


ロスオリンピック馬術の金メダリスト、バロン西を演じた伊原剛志さんが好演。
虚勢を張って崩壊していく士官を演じる中村獅童さんもいい味を出してました。
主役の渡辺謙さんはあらゆる意味で私たちがよく知っている「渡辺謙」だったけど、
あれはたぶんクリント・イーストウッド監督がそれを望んだのだと思います。
ひょっとしたら謙さんのイメージに重ねて栗林中将を造形したのかもしれません。
そのくらいキャラクターが謙さんにフィットしていました。


ドラマ部分の撮り方はかなりオーソドックスで、
日本の片隅で映像を作っている我々のレベルでも決してできない仕事ではありませんでした。
そういう意味では、世界の巨匠、世界の映画制作の中心で作られたものと言っても
決して気後れする必要はないと思いました。


でも、特撮はもう段違い。硫黄島攻撃のリアリティと迫力はまだまだ私たちには描き出しきれないものだったと思います。
そして、これ見よがしにはやらずに、リアルな恐怖のみを緻密な合成で表現していたのはとてもポイントが高かった。
そういうものをちゃんと見せるという美学と、それを支える予算はまだまだ全然違いますね。
そして「予算」より「美学」の方を大切にしているのも良かった。


一流だな、と思ったのはやっぱりそういう美学の追求度の違いです。
最初、映像が果てしなくモノトーンで、古っぽく見せたいのかな、と思っていたら、
米軍の爆撃が始まった途端に炎はむちゃくちゃ鮮やかでリアルな赤で描かれ
そこで突然、色が発生した感じになります。
そして、それまで沈欝で停滞していた日本軍の空気が一変。
命を本当に失う恐怖と、その裏返しの生きることへの執着が、
そのリアルさとあいまって突如として浮き彫りになる。
素晴らしいこだわりの演出だと思いました。


極め付けは、ラストで一人生き延びた日本軍兵士が、
米軍の担架に乗せられながら見る夕陽が同じように鮮やかに赤かったこと。
ものすごく意味の深い表現になっていて、
やられた!と思いました。


JOSH