Babauoù in Private Notes

アマチュア音楽ユニット、Babauoùに所属するKunio (Josh) Yoshikawaの雑記帳です。 我々のFacebook "Babauoù Book”にもどうぞお越しください。

おくりびと


アカデミー賞外国語映画賞をもらったから観る、というのも気が引けましたが、だから「観ない」というのはもっと良くないと思い、この機会に観てきました。


海外メディアは必ずしも納得していないように報道されていましたが、アカデミー賞のような大きな賞の選考については、いろいろな憶測をする人が常に居るものです。評価される作品には必ずどこかに光るものがあると思います。


もちろんこの作品にもたっぷり光るものがありました。


映画は進めば進むほど言葉少なになり、そのことが生と死の橋渡しをする静謐な空気に寄り添っていきます。
そのあたりからの登場人物の表情がすべてよかった。


主演の本木雅弘さんが企画者だと聞いていますが、彼の所作が本当に美しくて説得力がありました。
やはり役者として参加する以上の志がにじみ出ていたように思います。


そういえば峰岸徹さんはこの映画の公開中に亡くなったのでしたね。
作品とそれに関わる人の間に何か運命的なものが宿る、ということが時々あるように思います。
峰岸さんの逝去とこの物語が重なったことにも感じるものがありました。
役者人生の幕引きにあたってとても意味のある仕事を遺されたと思います。


映画トータルの率直な感想ですが、前半に多用される主人公のモノローグは、やや饒舌すぎて無駄が多かったように思いました。説明不足を恐れたのかと察しますが、あそこまで入れなくても十分に響いたと思うし、主人公が心でも言葉少なで居てくれた方が、より一層深まったような気がしました。
前半の描写がレアな職業をテーマにした作品ではよくある流れだったのも少々気になりました。


とはいえ、主人公が山崎努さんの仕事ぶりを見て、納棺師の真の価値に気づくあたりからの展開は圧倒的です。
一度はその仕事を忌み嫌った妻が、逝く人への敬意に満ちた彼の美しい仕事ぶりに心惹かれていくのもとても自然に感じました。
この作品を創った人々の志はどの瞬間からも、どの映像からも、そして音からも響いてきました。
十分に賞賛に値する映画だったと思います。