Babauoù in Private Notes

アマチュア音楽ユニット、Babauoùに所属するKunio (Josh) Yoshikawaの雑記帳です。 我々のFacebook "Babauoù Book”にもどうぞお越しください。

マンマ・ミーア


とっても良かった。
楽しめました。


ギリシャの小さな島で小さなホテルをつましく経営している母娘。
娘がついに結婚することになったのだが、実は娘の父かもしれない男性が3人いる。
母はその事実を娘に隠していたが、娘は母の日記を盗み見て知ってしまい、母に黙って3人の所在を探し出し、こっそり結婚式の招待状を送ってしまう。
娘の存在を知らなかった3人の男は、それぞれ仰天して20年ぶりに島にやってくるのだが…。


もう設定は無茶苦茶です(^^; あり得なさすぎ。
でも、ここにミュージカルの「不自然さ」を突破するひとつの答えがありました。設定がそもそも無茶苦茶なので、細かいことが気にならなくなるんです(笑)。
ABBAの楽曲が基本的にアッパーでギミック満載な感じなのも功を奏していたと思います。
既成曲カバーものミュージカルはこれまでかなり作られてきましたが、もっとも違和感なく作れた一本なのではないでしょうか。
歌詞と場面のマッチングには、かなり強引なものもあるんですが、それも「無茶苦茶」ルールでクリア、という感じです(^^;。


その分、普通のミュージカルのような振付けで行儀よく撮っているところは、かなり物足りなく感じました。振り切れたところの印象が強いだけに、どうもアイディア不足に見えてしまうのです。舞台映えはするけれども、映像にするとキレが悪くなる振付け、というのがあるようにも思いました。ビートルズミュージカル映画アクロス・ザ・ユニバース」でも強く感じたことです。


ただ、そうした弱点を補ってあまりあるのがメリル・ストリープの存在でした。
歌も表現力豊かで本当に上手だったし、動きもすばらしい。
若い頃、彼女はブロードウェイの舞台でミュージカルをやっていたそうですね。
彼女がすごいということだけでなく、アメリカのパフォーマーを育てる環境の懐の広さも感じました。
他の人が歌っている時にちらりと挿入されるメリルのリアクションがまた絶妙で、曲の魅力や場面のリアリティを何倍にも押し上げていたと思います。
名女優、メリル・ストリープを配した価値はこういうところにも存分に出ていました。


個人的にもっとも好きだったのは "The Winner Takes It All" をメリルがピアース・ブロスナンに向かって歌うシーン。
ここだけはギミック無しで、かつて愛し合い、夢やぶれた二人が向き合っているのをただ丁寧に撮っているだけです。それが本当によかった。
二人の役者の表情の機微と背景のもの悲しく美しい海の組み合わせが、やや強引な歌詞の解釈にも説得力を持たせていたと思います。
歌詞の内容を知っている歌なのに、ひきこまれてグッと来てしまいました。


そして、作品全体からトータルに響いてきたのは、ABBAをリアルタイムに聴いていたジェネレーションへのメッセージです。


人生の第四コーナーを回るところまで来たけれど、若い頃思い描いていたような人生にはなっていなくて、悲しいこと、辛いことも山のように体験した。
でも、今までの道のりは、その全てが今の自分を形作ってきたのだから、何も悔いる必要はない。
全てに意味があったのだ。


そして、夢というのは、いつからでも叶うもの。


このメッセージが音楽と共に自然に響いてきます。
これだけでもちょっと素敵な2時間を過ごせます。
観に行って良かった。


若手の話が置き去りになってしまいましたが(^^;
オーディションで選ばれた娘役のアマンダ・セイフライドの歌のうまさも特筆に値します。
彼女の表現力で映画はよりいっそう輝きを増していました。
ビジュアル的には普通に可愛い子、というレベルですが、そのことがむしろプラスになっていたと思いました。


彼女がエンドクレジットで聴かせるスローバージョンの "Thank You for the Music" は、この曲の持つもうひとつの魅力を見事に引き出したと思いました。個人的にはオリジナルよりも好きでした。ゆっくりと歌いかけるアマンダの声が心にしみました。


私は何も持っていないけれど、
とても素敵なことに、私は歌うことができる。
心から感謝します。
音楽を私にくれてありがとう。