Babauoù in Private Notes

アマチュア音楽ユニット、Babauoùに所属するKunio (Josh) Yoshikawaの雑記帳です。 我々のFacebook "Babauoù Book”にもどうぞお越しください。

サイモン&ガーファンクル「Songs of America」


「明日に架ける橋」40周年記念盤の付属DVDに収められたテレビ番組「Songs of America」。


名盤「明日に架ける橋」のレコーディング風景のドキュメント(どこかビートルズの映画「Let It Be」にも通じる雰囲気)と、69年のライブ映像をベースにして作られた1時間の番組です。1969年11月にCBSテレビで一度だけ放送され、二度と放送されることがなかったのだそうです。……ということは本邦初公開なのかな?


とにかくとても意義深い番組でした。まだ若い二人が、アメリカの60年代が決して美しく楽しい時代ではなかったと「堕ちたアメリカの夢」にしっかりと向き合って制作された番組。もちろんミュージシャンとしての彼らも堪能できるのですが、それ以上に二人が、時代のメッセンジャーでなければならないという使命感に突き動かされているのが伝わってきます。彼らの映像と同等に近い分量を与えられた60年代の映像フッテージケネディ兄弟、マーティン・ルーサー・キング、演奏風景が一コマも入らないウッドストックフェスティバルの映像など、数々の重いメッセージを含んだ記録映像が、S&Gの美しい音楽と、その美しさとは裏腹に社会と切り結ぶ歌詞に乗せて大胆に編集されています。唯一のポジティブなニュース・60年代のめざましい経済発展を伝える議会の映像には、消費社会を皮肉った「パンキーのジレンマ」を乗せるという徹底ぶり。


楽しいエンターテインメント番組のスポンサーになったつもりだったAT&Tが、この番組の試写を見て仰天し、内容を修正しなければスポンサーを降りるとCBSを脅したとか。しかし、CBSにも骨のある幹部が居たとみえて、AT&Tの50分の1の金額しか出資できない化粧品会社にスポンサーを差し替えて放送したそうです。


案の定、放送後はいろいろなところから圧力がかかったらしく、あれだけのビッグ・ネームのしかも活動停止前の最後のテレビ番組だったにも関わらずその後の再放送はありませんでした。恥ずかしながら私もこの番組の存在を知りませんでした。


イーグルスが歌った1969年の「最後のスピリット」はひょっとしたらこれだったのかもしれません。