Babauoù in Private Notes

アマチュア音楽ユニット、Babauoùに所属するKunio (Josh) Yoshikawaの雑記帳です。 我々のFacebook "Babauoù Book”にもどうぞお越しください。

サイモン&ガーファンクル "The Harmony Game"



「Songs of America」と共に、「明日に架ける橋」40周年記念盤のDVDに収録された最新のドキュメンタリーです。「Songs of America」の映像もふんだんに使われ、その背景についてもたくさん語られていました。タイトルは「曲のことを考えていると『ハーモニーゲーム』にはまっちゃう」という「Songs of America」のアート・ガーファンクルの言葉から。「このメロディにはもっといいハーモニーがあるはず」とどこまでも考え続けてしまうのだそうです。 2声のハーモニーで「ゲーム」を続けられるのは、それはそれですごい才能だという気がします。ずっとハモリ続けてきた二人ならではなのでしょう。


こちらは、多くの関係者の現在の証言がたくさん使われているので、時代そのものを映しだしていた「Songs of America」とは異なり、ポップ音楽史におけるサイモン&ガーファンクルのテクニカルな検証が中心になっています。S&Gの二人とプロデューサーのロ イ・ハリーがどんな風にポップ音楽実験を重ねてきたかがよくわかり、とても興味深い内容でした。今まで彼らはあまり口にすることがなかったと思い ますが、ビートルズビーチ・ボーイズを追いかけていた、とはっきりポールが語っていました。


特に面白かったのが、ロイが断固として二人のハーモニーを1本のマイクで録音した、というくだり。その録音が終わったあとで、一人ずつ単独の歌も録音して加えていくのですが、まず最初に二人で一本のマイクで歌うところからセッションが始まる。「S&Gのハーモニーに宿るマジックは同時に一本のマイクで録らなければ記録できない」というプロデューサーのこだわりが、彼らのとびきりのハーモニーサウンドをレコードに刻んでくれたのだとわかってちょっと感動してしまいました。ロイは二人のハーモニーを2音ポリフォニックの一台の楽器のように捉えていたのです。


表題曲「明日に架ける橋」については、ポール・サイモンの「1分前には影も形もなかったのに、気付いたらその全貌が頭の中に存在していた」と語るコメントが印象に残りました。まさに「降りてきた」ということですね。彼ら自身が良い曲だとは思いつつも、どれほどのものかわからないでいる中で、コンサートの観客や、周りのスタッフ、コロムビア社長のクライヴ・デイビスに至るまでの感動的なリアクションに触れ、次第に「ひょっとしたら自分達はすごい作品を作り上げたのかも知れない」と感じていくプロセスがとても印象的でした。


全編を通じて何よりも嬉しかったのは、直近の二人のインタビューを通して、一時期は心の距離がひどく離れていたこともあるはずの旧友同士が互いへの深い尊敬と愛情を完全に取り戻し、お互いの存在を誰よりも誇りに思って今を生きているとわかったことです。2009年の来日公演に行きそびれたことをちょっと後悔してしまいました。


ジョン・レノンポール・マッカートニーも、もしジョンがずっと生きていてくれたらこんな風になれたかもしれないですね……。