Babauoù in Private Notes

アマチュア音楽ユニット、Babauoùに所属するKunio (Josh) Yoshikawaの雑記帳です。 我々のFacebook "Babauoù Book”にもどうぞお越しください。

Dreamgirls

josh9092007-03-05



ダイアナ・ロスシュープリームスをモデルにしたモータウン(風)ガールグループの物語。
とてもよくできたハーフ・ミュージカルでした。


アカデミー助演女優賞を取った新人のジェニファー・ハドソンはまさに圧巻。
お芝居も歌も圧倒的で、こういう人が新人でオーディションから出てくるというところに
アメリカの底知れない層の厚さを感じました。


3人組の売れない女性グループが、
リード・ボーカリストを入れ替えることで成功し、
リードからはずれたメンバーは途中で脱退。
新しいメンバーを加えて活動を続行し、
最終的にはリード・シンガー独立のためグループは解散。
という流れは正にシュープリームスそのものです。
途中ではずされる元のリード・シンガーがジェニファー・ハドソンでした。


「Ray」でレイ・チャールズを好演したジェイミー・フォックス
モータウンベリー・ゴーディ・ジュニアをやや悪役化した男を演じていますが、
これも野心と意地で成功を勝ち取っていく人間くさい男性像を好演です。
彼は幅のある役者ですね。これからも注目したいです。


年代はきっちり60年代に設定してありましたが、
あくまでも嘘モータウン、嘘シュープリームスですから、曲はオリジナルです。
それってよく考えると凄いことで、
あのシュープリームスの黄金時代をその曲じゃない曲で再現するわけですから、
作曲チームはどれほどプレッシャーがあったろうと思います。
でも、各曲ともインパクトは十分で、とても説得力がありました。
まがいものなのに本物。
アメリカの底力です。


先月末、ラスベガスの街を歩いた時に、エッフェル塔があったりピラミッドがあったり、
街そのものは本当にまがいものなのに、
そこで観たショーは完璧な本物だったという印象と何か共通するものを感じます。


で、ビヨンセ
前半のジェニファー・ハドソンがあまりにもインパクトが強くて、
お芝居のプロではないビヨンセは食われ気味だなあと思って観ていたのですが、
中盤で、リード・ボーカリスト交替劇があり、
「私は本当は向いてないわ」なんていう芝居をボソボソとやっていた彼女が、
ステージの中心に立った瞬間にダイアナ・ロス級のオーラをしっかりと身に纏っていたのにはやられました。
ああ、これでこのグループは成功する!という説得力がばっちりありました。
もちろん、そのために彼女をキャスティングしたのでしょうが、
ビヨンセは十二分にそれに応えていました。


彼女は当代のスーパースターなのだから、存在感はあって当然なのだとは思いますが、
相手は黒人女性ボーカリストのカリスマの一人ダイアナ・ロスだし、
それを本当のナンバー1ヒットではなく、新作曲で納得させなくてはいけないのですから、
ある意味本物よりも大変と言ってもいいかもしれません。
ビヨンセはその仕事を見事にこなしていたと思います。
芝居の分を差し引いてもあまりあるものでした。


ミュージカルを観るといつも気になる「芝居と歌の境目の不自然さ」
この映画はセリフ劇もかなり多いので、余計に不自然になりそうな気がしていたのですが、
その不自然さを逆転の発想で解決していました。
何せ黒人のボーカルグループですから、どこでも歌っちゃうのはとても自然。
ステージリハーサルをやっているかのように歌い出すのに、
実は歌詞はセリフで、だんだん人が加わってダイアログになっていく、みたいな感じで
歌の導入に違和感がないように工夫されていたのも良かったです。


トータルでは期待以上に楽しめる2時間でした。