幸せそうだった花嫁が婚礼の日にかつての恋人と逃げてしまう。
恋人は、花婿の兄と父を殺した男の血筋だった。
花婿は二人を追い、やがて追いつめ、ナイフを手にする……。
「破調」がキーでした。
スペインの詩人・劇作家ガルシア・ロルカの原作を
白井晃さんの台本・演出で上演。
東京グローブ座の舞台が、アンダルシアの土の香りに包まれました。
渡辺香津美さんが、アコースティック・ギターを抱えて舞台に登場し、
場面に応じて衣裳も替えて、時には登場人物と入り交じりながら、
生演奏で音楽をつけていくという贅沢な試みをしていて、
これが本当に素晴らしかったです。
当然スパニッシュ音楽になるわけですが、
フラメンコ・ギタリストではない彼が演奏することで、
フラメンコとしては明らかに破調になっていくところが出てきます。
そのことを意識的に仕掛けている感じがあって、それがとても効果的でした。
森山未来さん、ソニンさん、新納慎也さん等のミュージカルの多い俳優に加え、
ベテランの根岸季衣さん、江波杏子さんまでも、
折に触れて踊るシーンが出てきますが、
この振付もフラメンコを基本にしながらも、
微妙にそれをはみだす雰囲気が漂い、
それが枠に収まりきらない不安定でアンバランスな何かを醸し出していました。
シンプルだけれども、ほんの少しバランスを崩したデザインの舞台装置。
そこで展開する、誰もが調和を欲しているのに、どうしようもなくそれが崩れていく悲劇の物語。
まさに「破調」の魅力に引きこまれるお芝居でした。