Babauoù in Private Notes

アマチュア音楽ユニット、Babauoùに所属するKunio (Josh) Yoshikawaの雑記帳です。 我々のFacebook "Babauoù Book”にもどうぞお越しください。

ダークナイト



噂に違わずとても良かった。
死んでしまったヒース・レジャーのジョーカーは確かに鬼気迫るものがあったし、撮る工夫もすばらしかったと思います。


甘めのピント、にじんだトーン、動きについて行ききらないカメラ。今初めてその場に立ち会ったカメラマンが撮ったかのような映像の数々が、つなぎのリズムをあえて荒っぽくした編集とあいまってドキュメンタリーのような迫真のシーンを生み出していました。


もちろん合成だらけなのだから、計算してそういう撮り方をした、ということになります。きれいに形にはめすぎて浅く見えてしまった前作「バットマン・ビギンズ」での失敗を十分に吟味したのでしょう。


ヒロイズムや正義感の脆さを描くことで、逆に悪役であるジョーカーの心の奥に潜む悲しみを際だたせた脚本もよく出来ていたと思います。
心理戦の展開も次々に新しい糸を張り、まったくだれることなく長時間を見せきっていました。


シナリオの構造上で気になったところは大きくはひとつだけ。
ゴッサム・シティを脱出する2隻の客船にそれぞれ移送する囚人と一般市民を分けて乗せるところで、犯罪者の移送は受け入れ側の態勢を整えてからでなければならないはずなのに、何故一般市民を積み残してまでまず囚人を運ぼうとしたのだろう、と気になりました。


しばらく先まで観ると、囚人と一般市民の船をまず作りたかった物語上の意図がわかるのですが、ここのところだけは、その狙いのために無理な設定をしたのが見えてしまって残念。
狙い自体はダイナミックでおもしろかったので、もう少しうまくだましてほしかった。


でも、トータルでは本当におもしろかった。
ゲイリー・オールドマンの職務忠実キャラぶりも良かったですね。
本来もっともカルトな芝居をする人の一人である彼が、
ゴッサムシティの良心を代表する役を直球でやっているのも、
この作品を魅力的なものにした要因のひとつだと思います。
ゲイリーはロバート・デニーロっぽい存在になってきましたね。