中原俊監督が18年前に撮った吉田秋生原作の映画を自身でリメイク。ただし、内容はむしろ続編と言った方が良い形に解体再構築されています。
原作の漫画も、前作の映画も傑作と言っていい出来なので、とてもリスクの高い企画だったのではないかと察せられますが、主演の福田沙紀が、自分自身を見定めかねている微妙な心の揺れを見事に表現していたことと、モデルの杏が素朴で自然な演技と、それをひっくり返すクライマックスで存在感を十二分に発揮していたことで、正当な続編としての品格を持つ作品に仕上がっていたと思います。
とても楽しめました。
ただ、それだけに「櫻の園」の封印を破るきっかけになる、福田沙紀が十年前の台本を発見した時の心理の流れと、杏たちが巻き込まれ始めるきっかけの流れがうまく行ってない感じだったのが残念でした。
孤独を是としていた福田沙紀が、封印されていた戯曲「櫻の園」を再上演しようと、級友たちに自ら声をかけるまでになったインパクトは一体何だったのか。そして、そのインパクトが福田沙紀をどのように変えて、結果として彼女の求心力となって杏たちに響いたのか。そこを頑張ってもらって、観る側の心もその時に一緒に連れて行って欲しかった、というのが正直な感想です。惜しい!
でも、杏の最終シーンでの存在感は、結果としてその様子を温かい眼差しで見ている福田沙紀の成長の表現につながり、静かな感動で心を満たしてくれます。いつもよりもずっと抑えた表現の川井憲次さんの音楽も、その静かな感動にぴったりとはまっていました。
これが原作。
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これが前作。
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どちらもお薦めです。