Babauoù in Private Notes

アマチュア音楽ユニット、Babauoùに所属するKunio (Josh) Yoshikawaの雑記帳です。 我々のFacebook "Babauoù Book”にもどうぞお越しください。

3時10分、決断のとき



南北戦争で片足を失ったさえない貧乏牧場主が200ドルの報酬と引き替えに、極悪強盗団のボスを目的地まで護送し3時10分発ユマ行きの汽車に乗せる仕事を引き受ける。
行く手にはボスを奪還すべく強盗団の手下達が必ず現れる。勝ち目は薄い。
でも、牧場主は家族が生きる場所を守るため、そして、自分を嫌う14歳の息子が誇れる父親に再びなるためにその仕事に志願した……。


凄腕のガンマンで、しかも頭も切れる強盗団の首領ウェイドをラッセル・クロウ、さえない牧場主エヴァンスをクリスチャン・ベイルが好演していました。


護送中の事件の数々もスリリングで目を離せませんが、実はアクションよりも二人のやりとりがとても心に浸みる映画です。
立場も考え方も全然違うのに、二人ともお互いの心の奥に秘めた絶望とそれにあらがう気持ちの存在に気付いてしまう。
何故強盗団のリーダーにしかなれなかったのか。
何故こんなさえない土地でさえない牧場主になるしかなかったのか。
二人の間に流れる奇妙なシンパシー。


中盤で印象に残った会話。


ウェイド「欲しいものを手に入れるのが男だ」
エヴァンス「いや、俺はまじめに働きたい」
ウェイド「……」


話は並行線。
自分の人生の方針は間違ってないとゆずらない。
だが、二人の表情からは互いへの羨望が読み取れます。
これが素晴らしかった。


そして、家を抜け出した14歳の息子が護送に追いつき同行することになって全てが変わっていきます。
駅のある町で手下がついに追いついて保安官を殺し、住民を金で味方につけ、エヴァンスはついに孤立無援に。


もうあきらめろと諭すウェイド。
お前は殺さない。護送報酬の5倍の金額を持たせるから、と。
それで人生をやり直せ、と。
でも、エヴァンスは首を縦に振らない。
それでは誇りは手に入らない。
息子の目の前でそれを諦めることはできない。


この時。
ウェイドは「欲しいもの」が変わってしまった。
自分が強盗団を続けて世の中に復讐していくことよりも欲しいもの。
汽車が到着し、手下がエヴァンスを遂に追い詰めた時、ウェイドは「欲しいもの」を手に入れるために思いがけないアクションを起こすのだった……。


そんな映画でした。


常に不完全な自分とどう向き合い、1度しかない人生をどう生きるか。
アクション満載の極上のエンターテインメントでしたが、根底に流れる深いテーマにも心を打たれました。