Babauoù in Private Notes

アマチュア音楽ユニット、Babauoùに所属するKunio (Josh) Yoshikawaの雑記帳です。 我々のFacebook "Babauoù Book”にもどうぞお越しください。

「ベンガルの虎」新宿梁山泊@花園神社



恥ずかしながら初テント体験でした。


世代的に状況劇場の全盛期にはちょっと遅れていたせいもありますが、学生時代は舞台よりも映像に関心が深かったこともあり、東京に住んでいたにも関わらずついに経験しないままでした。唐十郎さんの脚本には、後にテレビドラマで触れることになります。社会人になってからは仕事がきっかけでお芝居も観るようになり、唐十郎のフォロワーと称される舞台にもいくつか行きましたが、難解な台詞回しや飛躍の多い場面展開についていけないことが多かったのです。自分には縁の無いジャンルかな、とさえ思っていました。しかし、今回「ベンガルの虎」の再演(初演:1973年)を観て、考えを改めました。


ベンガルの虎」は、「ビルマの竪琴」の後日譚で、戦死者たちを弔うためにビルマに残ったはずの水島上等兵が実は日本に帰っていて、東京の下町で戦死者の骨でハンコを作っていた…。という物語です。台詞回しはやはりトリッキーで、幻惑されるような場面展開の数々。最後はテントの向こうが開いて新宿の夜景をバックにパワーショベルが突っ込んできて、上から水をかけ、代わりにヒロインを乗せて外でグルグル回転、という噂には聞いていたけどやっぱり呆気にとられる仕掛けもありました。でも、予想に反してちっともわかりにくくありませんでした。猥雑な現実の中で生に執着する人々の中に息づく、現実感がないほど遠い世界で命を落とした死者たちへの深い思い。その「情念」の太い軸が強靭に徹頭徹尾通っていました。


そのパワーがあまりにも圧倒的だったので、あらゆる飛躍はその軸の強さに見合った豊かな彩りとして機能していたように感じられました。
もし、これが普通の台詞回しや普通の仕掛けで進んでいたら、強い情念を包みきれずかえって破綻してしまうのではないかと思うほど。
異様な宝飾品と異様なドレスを呑まれずに身に纏えるだけの肉体を持っていた、ということなのではないかと思います。


裏を返すと、ある特異なスタイルに憧れて追いかける時には、その表面だけなぞっては絶対にいけないということでもありますね。
ディープな音楽の世界にも同じことが言えそうな気もします。とても勉強になりました。
いまさらですが、今後も機会があれば唐十郎さんの作品に触れていってみたいと思いました。


新宿梁山泊「ベンガルの虎」HP