Babauoù in Private Notes

アマチュア音楽ユニット、Babauoùに所属するKunio (Josh) Yoshikawaの雑記帳です。 我々のFacebook "Babauoù Book”にもどうぞお越しください。

二つの「ラヴ・レターズ」@パルコ劇場



ラヴ・レターズ」は、男女の役者がテーブルをはさんで観客向きに椅子に座り、台本を手にして朗読する、というスタイルのお芝居です。


幼馴染のメリッサの誕生祝いに呼んでもらったアンディ少年が、メリッサの母に宛てて書いたお礼の手紙から始まり、子どもだった二人がお互いを意識し、意地を張り、心の底では求め合いながらもタイミングが合わず、共に暮らせないまま過ぎてゆく日々をずっと二人の往復書簡の形で描いていきます。20世紀半ば、戦中から戦後にかけてのアメリカ社会の明暗にも翻弄されて二人はすれ違い続け、老いを意識する年代になってようやく結ばれる時が訪れるのですが…。


1989年にブロードウェイで大評判になり、翌年1990年にパルコ劇場で役所浩司&大竹しのぶのペアで初演して以来、ありとあらゆる出演者の組み合わせで388回にわたって上演されてきました。今回、私は片岡愛之助朝海ひかるペアと石井一孝七瀬なつみペアの舞台を二日連続で観ました。



石井&七瀬組は4回めの公演とのこと。物語の隅々まで知り尽くしたトーンで、二人がもともと持っているポップな感覚がアメリカのストーリーにうまくマッチしていました。石井さんがミュージカル界のスターで、翻訳劇に慣れているということもベースにあるのかもしれません。私は二人の「ラヴ・レターズ」を初めて観たのですが、隣のお客さんたちが「回数を重ねて七瀬さんに深みが出た」と仰っているのが耳に入りました。4回の上演の間に七瀬さんは結婚し、離別し、再婚して子どもを授かっています。物語が男と女の波乱の人生を描くストーリーなので、長く観続けてきたお客さんには重なるものがあったのかもしれません。


片岡&朝海組にはおもしろい発見がありました。歌舞伎と宝塚のトップスター共演。この二人で演じると、アメリカンな物語なのに、なんだかシェイクスピアのような気配が漂うのです。二人に備わっている品のようなものがそう感じさせたのかもしれません。彼らにちょっと似合わない俗っぽい台詞もあちこちにちりばめられているのですが、それを二人の品でねじ伏せた、みたいな印象です。真面目なアンディと勝ち気なメリッサというキャラクターの基本属性は、素のお二人とどこかつながるところもあって、シェイクスピアな印象になっても物語との乖離感はありませんでした。


一字一句同じ台本で180度違う二組のお芝居を堪能しました。見比べてみてよかったです。
今シーズンは、三上博史さん&安田成美さんペアが演じた第388回目の上演で幕を降ろしましたが、まだまだこれからも続いていくようです。
また興味深い組み合わせの回に足を運んでみたいと思います。