Babauoù in Private Notes

アマチュア音楽ユニット、Babauoùに所属するKunio (Josh) Yoshikawaの雑記帳です。 我々のFacebook "Babauoù Book”にもどうぞお越しください。

ジェフ・エメリック / ザ・ビートルズ・サウンド最後の真実


自分のとってのバイブルでした。


ジョージ・マーティンの「耳こそはすべて」より、マーク・ルウィソンの「ザ・ビートルズ・レコーディング・セッション」より(もちろんそれぞれ名著ですが)心に残る一冊となりました。


プロデューサーの心を持つエンジニアが、夢のある客観性で自分の体験を描写した本、と言う印象です。 ポップ音楽に興味を持ち、多重録音の仕組みに興味を持ち、身の回りにあるものから発想しながら、新しい音楽を探していく旅。私たちが彼らに憧れて、Babaouoでやりたかったこと、探してきたことを、先生が答え合わせしてくれているかのようでした。 ビートルズのレコードを聴きまくってもどうしてもわからなかったことの答えがこの本にはたくさん書いてありました。
その一方で、自分がきっとこういうことだろうと推測していたことが当たっていたところでは、むしろ書かないで欲しかったと勝手な気持ちになったり……(笑)


ビートルズよりも若かった青年ジェフが、身びいきをしない厳しい目で人間としての彼らを見つめながらも、彼らに深い愛情を持ち、彼らとの刺激的な仕事に情熱を惜しみなく注いでいく様もとてもドラマチックで、夢をもった一人の男の冒険と友情と成長の物語としても読み応え十分でした。 ジェフは、ジョージ・ハリスンに対してかなり辛めの評価をしていますが、その一方で決して彼をバカにせず、ジョージが彼ならではの才能を花開かせた時にはそれを素直に喜び、尊敬の念を隠さないのもとても良かった。 ジョンが撃たれて死んだところのくだりでは、ジェフにつられて気持ちが一気に当時に戻ってしまい、涙を抑えられませんでした。ビートルズ関連本を読んで涙を流したのは初めてです。


ビートルズが7年間でどうやってあんなに変わっていったのかを知りたい人には絶対にお薦めの本ですが、ビートルズを有名曲しか知らないような方にも極上の音楽物語としてお薦めできます。邦訳版は辞書のように厚いので思わず引きますが(笑)、それを乗り越えて是非読んでください。


ザ・ビートルズ・サウンド 最後の真実

ザ・ビートルズ・サウンド 最後の真実


※名曲"I'll follow the sun"の唯一の欠点、ビートルズらしからぬいい加減極まりないギター・ソロは、個人的にはビートルズ最大の謎のひとつでしたが、この本に答えがありました。ジョンのアコースティック・ギターのソロを聴いてみたかった……。


ビートルズのラスト・アルバムの仮題が「エベレスト」で、エベレストを背景にするか、エベレストの頂上で写真を撮ろうと考えていたというエピソードは知ってましたが、その計画が頓挫した時に、「じゃあどこに行けばいいんだよ!」と怒ったポールに、リンゴが「だったらさ、ここの外で写真とって『アビイ・ロード』ってタイトルにすればいいじゃん」と言ったという話は、初耳でサイコーでした(笑)。なんてビートルズらしいエピソードなんだろう。 本文中には描かれてませんが、一瞬全員が沈黙してリンゴを見つめた後、大爆笑の渦になった様子が目に浮かびます。 何よりもそのアイディアが採用されているのが素晴らしい。後々、評論家やファンが深読みするのを知るたびに彼らはクスクス笑っていたのでしょう。


※様々な場面で、彼らが英語で何と言っていたのかどうしても知りたくて、原書も買ってしまいました……。ペイパーバックで厚さは半分。かなり軽いです。こちらもお薦めかも。


Here, There and Everywhere: My Life Recording the Music of the Beatles

Here, There and Everywhere: My Life Recording the Music of the Beatles