Babauoù in Private Notes

アマチュア音楽ユニット、Babauoùに所属するKunio (Josh) Yoshikawaの雑記帳です。 我々のFacebook "Babauoù Book”にもどうぞお越しください。

レイン〜ビートルズに捧ぐ


ビートルズの4人を演じるバンドがデビューから解散まで編年体でライブ演奏し、彼らが駆け抜けた8年間の世相を背景の映像でなぞりながら60年代を追体験するという趣向の舞台です。
見所は4人のライブ演奏のそっくりぶりと、彼らの音楽を使って60年代という時代をいかに切り取ってみせるかというポイントです。
ビートルズはその8年間で音楽もファッションもめまぐるしく変化していったバンドなので、まず出演者がそれをどのように演奏と扮装でみせていくか、ということも問われます。


私は30年程前、高校生の時に、この手の企画の先駆けとなった「Beatlemania」を品川プリンスホテルで観ています。
当時も、4人のそっくりさんのライブでしたが、背景は文字でニュースが流れる1行の電光掲示板のみ。
現在の企画に比べるとはるかに地味でしたが、それはそれで想像をかき立てる効果があったのを記憶しています。
最後の演奏曲「レット・イット・ビー」のエンディングに合わせて掲示板に最後に流れた一行ニュースだけ、今も覚えています。


THE BEATLES BREAK UP」


さて、話を「レイン」に戻します。
当時の映像フッテージと、今回のキャストを入れ込んで新撮した加工映像を組み合わせて「フォレスト・ガンプ」のような効果も使いつつ、とても臨場感のある演出がなされていました。シェアスタジアムの映像を背景に演奏する場面では、本当にスタジアムライブをやっているような雰囲気を出すことにも成功していたと思います。


全体を通じてとても楽しめた2時間でしたが、見終わっての個人的な結論は「惜しい!」です。


心に残った「惜しい!」点と、良かった点を以下にメモしておきます。


まず、ポール役はそっくりでした。見た目も仕草もしゃべり方も。これで左利きなら完璧です。
ただ、そこが大問題。完璧を目指さないとこういうショーはダメなのでは?
ビートルズの初期のライブで最も印象的なことのひとつが、ポールがレフティである故に、ジョンと並んでもジョージと並んでも2本のネックが蝶のように開いてサマになる一本マイクのコーラススタイル。
これが再現できていないのはかなり台無しです。
Babaouoにも右利きなのにポールの曲を演るからには、という理由で左でベースを弾く人がいます。アマチュアでもそこまでやるのに何故?と思ってしまいました。


一方、ジョン役は非常にぬるい印象でした。ポールと違って本気でそっくりにやろうとはしていない、と感じてしまいました。
録音部分のセリフ等はかなり本物のジョン・レノンに迫っているのにどうしてだったのでしょう。違う人だったのかな?


ジョージ役は、見た目が最晩年のジョージにそっくりでした。企画上無理とは思いますが、彼にはジョージのラスト・アルバム「BRAINWASHED」の曲を是非演奏して欲しかったです。終盤のアビイ・ロードメドレーのギターソロを彼が1人で3人分やっていたのにはちょっとびっくりしました。ジョン役はひたすらリズム・ギターでした。


リンゴ役は健闘していたと思います。よく研究していたと感じました。しかし、どうしても違うのです。
今回のショーで最も強く感じたことのひとつが、「最も再現が難しいのはリンゴ」だということです。
世界で唯一無二のグルーヴ。そして、あの歌声。
普通にドラムに長けていても、声色を作れても、どうしても彼のようにはならないのですね。
リンゴ役の人が、そこを何とか近づきたいとものすごく頑張っていたので、余計にそのどうしても届かないもどかしさを感じてしまいました。


と、ちょっと辛めのことばかり書きましたが、もともと小さなライブハウスでレギュラーでやっていた企画が世界ツアーするまでになったのだという経緯を聞いて、もしこれが小さなライブハウスで行われていたら、何倍も感動できただろうと思いました。
ビートルズは中期にライブ活動をやめてしまったため、「サージェント・ペパーズ」以降の曲をビートルズが4人でライブ演奏する、というのは一種のファンタジーとして我々ビートルズファンの心をかき立てるものがあります。そこには出演者も演出もよく応えてくれました。
ショーの終盤で、ジョン・レノンマディソン・スクエア・ガーデンでのソロ・ライブと同じファッションで現れ、黒いベストを着た「レット・イット・ビー」スタイルのポールと共演しているという構図にはグッと来てしまいました。


最後に、「欲を言えば」やってほしかったことを二つ。
・ポールの「イエスタデイ」を紹介するのはジョンでなくジョージにしてもらって、「Opportunity Knocks!」をぜひやってほしかった。
・「ツイスト・アンド・シャウト」のジョンの前説では「Rattle your jewelry」をぜひやってほしかった。
これやってくれたらマニアの点は3割上がると思いました(^^;