Babauoù in Private Notes

アマチュア音楽ユニット、Babauoùに所属するKunio (Josh) Yoshikawaの雑記帳です。 我々のFacebook "Babauoù Book”にもどうぞお越しください。

パイレーツ・ロック "The Boat That Rocked"


サイコーの映画でした。
誰にでもお薦めというつもりはありません。
イギリス映画らしいクセもあるし、アメリカ映画的なコマーシャルな作りではないので。
でも、私にとってはそういうことも含めて文句なしにサイコーでした。
1960年代の音楽と、その時代の若者たちの生き方に興味がある人ならきっと楽しめると思います。


1966年、イギリス。
当時のイギリスのラジオ局には民放がなく、唯一のラジオ局BBCは、1日にポップ音楽を流す時間を45分しか作っていなかった……。


でも、新しい音楽ロックをもっともっと聴きたい。聴かせたい。
みんなの熱い思いから生まれたのが「海賊放送局船」。
イギリスの領海外に船を出し、そこから24時間ロックをかけまくるラジオ放送を出しちゃおう。


そんな人間達が集まった船は結果として、音楽を愛する者達が共に暮らすコミュニティーとなり、恋を語り、権威にたてつき、互いに喧嘩し、人生を楽しむDJたちのライフスタイルがそのままイギリスのリスナー達に24時間伝えられていった。それが気に食わない英国政府の大臣は、法律を改正して彼らを締め出しにかかるが、黙って言うことをきく彼らではない。そして、ついに海賊放送局の名に恥じない冒険の時がやってくる……。
そういう船のお話です。ストーリーはオリジナルですが、シチュエーションは事実。個性的なDJ達の役柄にもモデルがいるようです。



ラブ・アクチュアリー」のリチャード・カーティス(脚本&監督)が相変わらず素晴らしい仕事をしてくれています。アメリカ映画ではなかなか見られない筋書きをはみだした展開も、そこに「ロック」を感じられて大好きでした。
「Mr.ビーン」を世に送り出したコメディの名手ですから、もちろん笑いたっぷり。それでいて音楽のツボを外さない使い方で、サイコーの愚か者達の愛すべき心根を何倍にも増幅させて何度もジーンとさせてくれました。


当然60年代の音楽がかかりまくります。オープニングはキンクスの「All Day and All of the Night」。「Let's Spend the Night Together(ローリング・ストーンズ)」も「My Generation(ザ・フー)」も「青い影(プロコル・ハルム)」も「The End of the World(スキーター・デイヴィス)」も最大限に効果的なタイミングで出てきます。「こう来たか〜」と思わず嬉しくなったのも一度や二度ではありませんでした。さすがリチャード・カーティス。わかってる人です。自分の心の奥にある音楽への熱い想いを再認識させてくれた映画でした。


唯一残念だったのは、やっぱりビートルズの音源が使われていなかったこと。画像からもわかるようにビートルズへの思いもビンビン伝わってくる作りなだけに、その音が出てこないのはやっぱりつらかった。ポール・マッカートニーもプレミアに出席していたみたいなのに何とかならなかったのかなあ。


60年代を描いた映画にもたいてい出てこず、60年代大全集みたいなコンビレーションにも絶対に入らないビートルズ。こんなことやってるときっと100年後の研究者たちに、ビートルズなんてその時代のポップ音楽に何の影響も与えていないなんて研究論文を書かれちゃいます。目先の儲けよりもずっと大切なものがあるはずなのに……。権利を守ることももちろん大切だし、難しいことは承知していますが、次世代に伝えていくべき作品は目先の収益を度外視して、皆があらゆる機会を通じて次世代に伝えていく。そんな世の中であって欲しいと切に思います。