Babauoù in Private Notes

アマチュア音楽ユニット、Babauoùに所属するKunio (Josh) Yoshikawaの雑記帳です。 我々のFacebook "Babauoù Book”にもどうぞお越しください。

コンフィダント・絆 by 三谷幸喜

josh9092007-04-12



三谷さんの全ての手口がもったいない程にちりばめられて、それが全て完璧にかみ合っている。
そういう舞台でした。
個人的には今まで観た彼の舞台ではいちばん好きかもしれません。


スーラ、ゴッホゴーギャン、シュフネッケル。
全然売れていない4人の画家がパリに共同でアトリエを借り、スカウトしてきた踊り子、ルイーズをモデルに絵を描く。
そのひと月の間に起きた出来事の物語。
セット転換は例によって無し。アトリエだけで全てが進行していきます。
4人とも実在する画家ですが、ひとりだけ今では誰も知らない画家がいます。
ここがポイントになっています。


誰かにほめてもらわないと自信が持てないペシミストゴッホ
奔放で男臭いプレイボーイのゴーギャン
数学的に美術を捉え点描の手法を編み出した、いいとこのお坊ちゃんスーラ。
美術教師でみんなのまとめ役シュフネッケル。


まだ一枚も絵が売れていないゴッホこそが真の天才だと、スーラもゴーギャンも気付いています。ゴッホを表向き軽んじながらも内心とても恐れています。
でも、シュフネッケルは気付かない。みんなのためにアトリエを探し、共同体のルールを定め、モデルの交渉をしてくる世話好きの彼は、既に展覧会が開けるスーラの力はその成功故に認めるのに、本物が見抜けない。
そして、シュフネッケルは自分に見る目も才能も無いことに気付いていないのです。そのことが物語を悲劇に導きます。
ネタバレになるので筋書きはこのくらいにしておきます。


ゴッホ生瀬勝久さん、ゴーギャン寺脇康文さん、スーラの中井貴一さん、そしてシュフネッケルの相島一之さん。
4人ともドンピシャでした。それぞれの持ち味が最大限に発揮されていたと思います。


そして、紅一点の堀内敬子さん。
モデルのルイーズを演じ、主要なオリジナルのシャンソンを歌い、物語を動かしていく。
ミュージカルで活躍している女優さんですが、彼女もこれまでのベスト・パフォーマンスだと思いました。
三谷さんがもっとも堀内さんらしい役柄にルイーズを組み立てていたことも大きいと思います。


音楽の仕掛けも素晴らしく、舞台の下手にセットを削って置かれているグランドピアノで
荻野清子さんが生演奏。オリジナルのシャンソンも印象に残る曲です。
演奏する荻野さんはずっと見えているので、ただ弾いているだけではなく、芝居にもユニークな形でからみます。
劇中の登場人物にはならないのにからむところがミソ。


全てのアイディアを生みだし、まとめ、この新鮮で懐かしくて楽しくて哀しい物語を紡ぎ出した三谷幸喜さんには脱帽です。
あの人はいったいどこまで進化していくのでしょう。今後も彼の作品からは目を離せません。